自動車原動機の清浄燃料利用
および
燃焼と排気に関する
2004中日ワークショップ

荒木幹也(群馬大学工学部 助手)

日本学術振興会および中国自然科学基金からの支援を得て,平成16920日から926日の日程で,「自動車原動機の清浄燃料利用および燃焼と排気に関する2004中日ワークショップ」が,西安交通大学(議長:蒋徳明教授)と群馬大学(議長:小保方富夫教授)の主催で行われた.日本からは群馬大学の志賀聖一,石間経章,荒木幹也,さらに西田恵哉(広島大),前田昌信(慶應義塾大・名誉教授),森吉泰生(千葉大)らが参加した.ワークショップとあわせて,西安交通大学,浙江大学,上海交通大学の研究室・施設訪問,西安市,杭州市の工場および試験所見学を行った.学術的成果のみならず中国の技術と経済,大学の教育・研究の実情を知り,友好を深める意味でも成功であった.

今回の論文集は397頁,総参加者は約70名となり,前回(1999年)と比較しその規模は約2倍となった.さらに,発表内容にもかなりの向上がみられた.以下,ワークショップにて報告された中国の研究の一部を紹介する.
(1Study on Performance of DME Fueled DI Diesel EngineZhou Longbao ほか (Xi’an Jiaotong University) 新燃料として期待されるDMEDimethyl Ether)に関する実験的研究である.定容燃焼器を用いたDME噴霧の燃焼特性計測,エンジン性能試験,バスの走行試験を行っている.
エンジン性能試験では,従来の軽油と比較し,燃費,排気ともに良好な結果が示された.バスの走行試験では,速度,騒音ともに従来の軽油と比較し改善されたことが示された.
今や石油輸入国の中国では,DMEなど石炭,天然ガスから合成できる新燃料の導入に対し,国をあげて取り組む姿勢が大変印象的であった.

(2) Engine Performance and Emission Characteristics of a Compression Ignition Engine Fueled with Diesel/Dimethoxy Methane Blends, Huang Zuohua ほか (Xi’an Jiaotong University)DMMDimethoxy Methane)と軽油の混合燃料に関する実験的研究.燃料の混合比を変化させ,燃費,排気に及ぼす影響をディーゼル機関で調べた.DMMを混合することで,正味燃料消費率が改善され,CO,すすの排出量が顕著に減少することが示された.

(3) Characteristics of Particle Emissions Fueled with LPG and Gasoline in a Small SI Engine, Li Liguang ほか (Shanghai Jiaotong University) EAAElectronic Aerosol Analyzer)を用い,火花点火機関排気中の微粒子濃度を測定した.粒子径の測定レンジは,0.0032 1μmと非常に小さく,エンジン負荷を変化させて,粒子状物質の濃度,粒子径を定量的に計測している.先端的計測の分野は,その国の研究水準が反映される.ここでも中国の高レベル化が注目された.

(4) The Development of BSP Based on OSEKWorks Platform for MPC555, Feng Xue ほか (Beijing Institute of Technology) コモンレール燃料噴射システムなどの燃料噴射法の高度化に伴い,ECUの性能向上が必須となっている.ECUのリアルタイム制御システムの構築を,大学レベルで行っており,中国の新しい技術戦略ととらえることもでき,注目に値する.

以上のように,中国では,新燃料利用,先端的計測,ソフトウエア開発など,日本や欧米の大学と異なる技術戦略が打ち出されている点が印象的であった.今後のわれわれの研究姿勢に対しても,多いに刺激となった.会場玄関での参加者一同の記念写真を下記に示す.