よくあるご質問と、MOの独善的な回答


ご質問

Q1渡良瀬遊水地は本州最大の湿地と聞きましたが本当ですか。

Q2.渡良瀬遊水地には何種類の植物がありますか。

Q3.貴重な植物としてはどんなものがありますか。

Q4.絶滅危惧植物ってなんですか。

Q5.渡良瀬遊水地の植物図鑑はありませんか。

Q6.ヨシ焼きは植物にとって悪い影響はないのですか。

Q7.土木工事は植物にとって悪い影響はないのですか。

Q8.渡良瀬遊水地は乾燥化しているのではないですか。

Q9.ヨシ原に人工的に水を流すことは植物にとって良いことですか。

Q10.渡良瀬貯水池(谷中湖)には貴重な水草がありますか。

Q11.絶滅危惧植物をどこかに移して育てれば良いのではないですか。

Q12.きれいな花をたくさん見たいのですが。

Q13.渡良瀬遊水池? 渡良瀬遊水地?


回答

Q1渡良瀬遊水地は本州最大の湿地と聞きましたが本当ですか。

本州最大というよりは、本州、四国、九州・沖縄で最大です。つまり、北海道以外で国内最大の湿地です。

国土地理院が全国の湿地面積を計測し、上位20位までをホームページ上で発表しています。こちら

それを以下に引用します。
現在における全国湿地名称別湿地面積順位(上位20)
※黒字は北海道
1位 釧路湿原 227平方キロメートル
2 別寒辺牛川流域湿地 108
3 根釧原野湿地群 86
4 サロベツ原野 60
5 霧多布湿原 30
6 渡良瀬遊水地 20
7 厚岸湖周辺湿地 14
8 勇払原野 14
9 床丹川流域湿地 10
10 尾幌川流域湿地 10
11 春別川流域湿地 10
12 猿払川流域湿地 9
13 当幌川流域湿地 9
14 尾瀬ヶ原 8
15 稚咲内沿岸小湖沼群湿地 8
16 浅茅野湿地 8
17 根室半島湿地群 7
18 根室南西部湿地群 6
19 野付崎湿地 6
20 生花周辺湿地 6

このように渡良瀬遊水地は全国第6位に位置していますが、それより上位はいずれも北海道なので、渡良瀬遊水地は北海道以外で最大の湿地ということになります。なお20位までのうち、北海道以外では他に尾瀬ヶ原が入っているだけです。

国土地理院のホームページには、日本全国の湿地面積の変化を詳細に調査した結果が示されています。
国土の変化のうち、湿地の減少は著しいもので、明治・大正時代に存在した湿地面積の61.1%が消滅しているとしています。

興味深いことに、国全体の湿地面積が減少した中で、全国一増加したのが渡良瀬遊水地となっています。
明治・大正期 347.80ha
現在 1967.07ha

湿地面積の測定には5万分の1の地形図が用いられており、その地図にある湿地記号によって計測されています。
明治時代までここには谷中村があって人が耕作などをしていました。足尾鉱毒事件の経緯によって村が廃村となり、ここが遊水地にされ広く湿地となったためです。



Q2.渡良瀬遊水地には何種類の植物がありますか?

 2002年藤岡町発行『藤岡町史 資料編 渡良瀬遊水地の自然』では691種類をあげています。これは1985年から2001年までに発表されたものを引用して作成しました。

 でも、これはおそらくまだ不完全です。なぜなら渡良瀬遊水地はあまりに広いため、調べつくしたわけではないからです。国土交通省利根川上流工事事務所の委託による調査結果では1000種類以上があげられています。

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Q3.貴重な植物としてはどんなものがありますか。

  かつて日本のどこにでもあった湿地は、姿を消したり、水質の悪化のため数種類の決まった植物しか生育できない場所になってしまいました。

  渡良瀬遊水地は、低地の湿地に生える植物の、見本園のような所です。渡良瀬遊水地はきわめて広いのと、自然が保たれ、多様な水辺の環境が残っているので、全国で消えてしまいそうな植物がまだたくさん残っている場所です。

  日本の国から(地球上からという場合もある)消えてなくなろうとしている植物があるわけです。それを絶滅危惧植として環境省がリストを発表しています。
  渡良瀬遊水地にはその中の49種類があります。1カ所でこれほど多くの種類が見つかるところは例が少ないと思います。

  次に、新種とまではいかなくても、それに近いものがあるかもしれません。植物分類学の研究者の方に研究して欲しいものがあります。
  トガクシツリフネ(ナメラツリフネソウ)としているものです。ツリフネソウの品種で花梗に剛毛がないものをいいますが、遊水地のものはツリフネソウと比べて花梗の剛毛以外にも明瞭に異なる点がいくつか見られるので、これも品種以上の違いを感じます。
(2005/9/21の日本植物学会で、本種はワタラセツリフネソウという名で新種として発表されました)

  さて、貴重なという言葉に答えるのは実は難しいのです。なぜかというと、この言葉は価値観が入っているからです。人によって価値観は大きく異なります。
  よくあるのは、人間が利用する上で価値の高いものを貴重な植物と思っている場合です。いわく、ヨシは水をきれいにしてくれる、きれいな花は心を和ませてくれる、山菜は食のバリエーションを豊かにしてくれる、薬になる、山野草として売買ができる。それはそれでいいかもしれません(山野草の売買だけは止めて欲しい)。

  しかし、ろくな花が咲かないなんの役にも立たないいわゆる雑草だって、同じ生きている仲間ではないのか。よく見るとどれも個性的で魅力があるのだぞ。美人ばかりがちやほやされる世の中はどこか間違っている。かな。どう見ても雑草の面をしている人間のひがみか。

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Q4.絶滅危惧植物って何ですか。

 絶滅危惧植物とは、ここでは日本の国から絶滅してしまうおそれのある植物をさしています。鳥でいうとトキのようなものです。

 1989年に、日本自然保護協会とWWFJによって「我が国における保護上重要な植物種の現状」(いわゆる植物版レッドデータブック)が発行され、重要な資料として活用されてきました。

  1997年8月に、環境庁がさらに綿密な調査に基づく新たなリスト(植物版レッドリスト)を発表しました。

 2000年7月、レッドリストに改訂を加えた『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック−8 植物T(維管束植物) 環境庁編』が刊行されました。

 2000年版レッドデータブックでは次のようなカテゴリーに分類されています。また維管束植物(種子植物、シダ植物)で該当している種数は次の通りです。

絶滅 20種
   我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅 5種
   飼育・栽培下でのみ存続している種
絶滅危惧 
   絶滅危惧TA類 564種
     ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
   絶滅危惧TB類 480種
     1A類ほどではないが近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
   絶滅危惧U類 621種
     絶滅の危険が増大している種
準絶滅危惧 145種
   現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては絶滅危惧に移行する可能性のある種
情報不足 52種
   評価するだけの情報が不足している種 

合計種数 1887種

  絶滅危惧種は上のカテゴリーでは絶滅危惧TA類、TB類、U類をさしますが、当ホームページでは、準絶滅危惧種をそれに加えて絶滅危惧植物としています。

  リスト作成に当たっては、環境庁が各県ごとの調査協力者(約400名)に調査を依頼し、指定した対象種について、その生育個体数などを現地調査しました。そのようにして集まった全国のデータを解析して植物版レッドリストが作られました。

 2000年版レッドデータブックについて、および入手先はこちら

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Q5.渡良瀬遊水地の植物図鑑はありませんか。

 書籍としては出ていません。
 しかしCD−ROMならあります。藤岡町遊水池会館の中の渡良瀬遊水地アクリメーション振興財団から販売されています。
現在販売中止となっている模様です)

 このCD−ROMは、建設省関東地方建設局 利根川上流工事事務所が企画し、日映科学映画製作所が制作したもので、MOが監修しました。

 内容ですが、渡良瀬遊水地に生育する667種類の植物について、ほとんどの植物の画像とコメントが入っています。50音別、科別、花期別による検索が可能です。

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Q6ヨシ焼きは植物に悪い影響はないのですか。

  ないです。むしろ必要です。
 
  絶滅危惧1B類トネハナヤスリの大群生は、世界でもここだけでしょうが、ヨシ焼きが行われなくなったらすべて消えるおそれがあります。
  同じことは1B類ハナムグラエキサイゼリシムラニンジンタチスミレ2類ノウルシノカラマツサクラソウイヌセンブリマイヅルテンナンショウ等でも言えます。

  これらの植物は、春先に地中から芽を出して生長するために強い日光を必要としているのです。ヨシオギが立ち枯れたままで放置されると、地表には日光が届きません。またヨシの枯れた葉や茎が堆積したままだと物理的にも発芽をじゃますることになります。

  ヨシ焼きによって地表が焼かれても、地中の根茎には影響が及びません。だから多くの多年草で問題がないでしょう。むしろ、ヨシでさえヨシ焼きをしないと新芽が伸びず、枯れてしまうことさえあります。
  ただし樹木には影響があるでしょう。樹木の幼樹はヨシ焼きで排除されます。しかし、おおむねここは湿草原として価値の高い所だと考えられるのでそれも必要なことだと思います。

  よしず作りが盛んだった頃はヨシが広い範囲で刈り取られていました。また昔はかまどのたき付け、つまり燃料としての利用価値があったので、刈り残されるようなものは少なかっただろうと思われます。それらの需要が減少した現代になってヨシ焼きが行われるようになりました。そのようなことから判断すると、ここの植物たちは、春先には地表が明るく日に当たるような環境でずっと暮らしてきたわけです。

  基本的に、それまであった環境を変えることは、それまで生活していた植物たちの生活を脅かすことです。今までしていたヨシ焼きを止めることは、植物にとってきわめて重大な環境の改変だと考えられます。

  今後ヨシ焼きがどうなるのかMOは非常に心配しております。もしここの植物たちが言葉を持っていたとしたら、嘆願の声が嵐のごとく送られてくるに違いありません。

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Q7土木工事は植物にとって悪い影響はないのですか。

  大変微妙な問題です。なぜかというと、工事はものすごい力を持った両刃の剣だからです。
  これはかなり説明が必要でしょう。

  一つは誰でもわかるマイナス面です。
  渡良瀬遊水地には貴重な植物が群落を作って生育しています。そのうちトネハナヤスリハナムグラノカラマツなど広くたくさんあるものは、一部の群落が破壊されても広い遊水地全体では大きな問題はないと思います。しかし、遊水地でも限られた場所にしかないものが結構あるのです。そこが工事で掘られてしまったら・・・・・おわかりの通りです。

  ところが意外に思われるでしょうが、工事にもプラス面があるのです。
  渡良瀬遊水地には絶滅危惧植物が49種見つかっています。この中で、なんと工事の跡地でしか見られないもの工事の跡地に明らかに多いもの7少なくともあるのです。

  工事の多くは土砂の採掘です。その場合は地表から数メートル下まで掘りとられます。その跡地はところどころ水たまりのある湿った裸地になります。強い日光を浴びて、そこに様々な植物が芽生えてくるのですが、その中に、ヨシなどの群落中では決して見られないものがあります。

  たとえばミズアオイです。これは渡良瀬遊水地では工事跡地にしか見られません。工事直後に大群落を形成することがありますが、次年には早くもなくなってしまいます。
  カンエンガヤツリもそれに近いです。
  コツブヌマハリイはしばらく残りますが、他の草におおわれるといつの間にかなくなってしまいます。

  これらの植物の共通点は、1・2年草、または多年草でも草丈が低いことであり、かつ、年間を通して強い日の光を必要としていることです。
 
  1・2年草は多年草が入ってくると根を下ろしにくくなると考えられます。また1・2年草は発芽したときの生長が遅いので日光を奪い合う競争に不利です。したがって、これらの植物が生活できるのは、樹木や草丈の高い多年草がまだ入ってこない裸地だと考えられます。
 
  一般に裸地が自然のまま放置されると、そこに生える植物は年を追ってゆっくりと交代していき、その現象は遷移と呼ばれています。渡良瀬遊水地では高さ3メートルにもなるヨシがびっしり生える状態が最後にたどり着く姿(極相)で、そうなったときそこに生育できるものは、ヨシにからんで上っていける蔓植物、暗さに耐えられる植物、ヨシが伸びる前に1年の生活を終えてしまう植物、のどれかであり、かなり限られた種であると言えます。
 そうなったときには、遷移初期の植物たちは、土の中に多量の種子を残しておいて次の機会を辛抱強く待っているのです。

  渡良瀬遊水地は多様な植物が生育していますが、それは環境が多様だからです。堤防、乾いた土地、水分条件の異なる様々な湿地、池沼などに加えて、土木工事が提供しているのが日当たりの良い裸地(湿地)なのです。

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Q8.渡良瀬遊水地は乾燥化しているのではないですか。

 はじめに、MOはわからないと申しておきます。乾燥化という言葉が何を意味するのかよくとらえられないのと、独自のきちんとしたデータを持っていないためです。

  しかし最近「渡良瀬遊水地は乾燥化が進んでいる」と言われ、それを前提としてここの保全が論じられる傾向があります。すると単純に、全域に水を流し込んで水気を多くすれば湿地の植物も回復するのでは、という錯覚が生じたりします。実は問題はそのように単純ではありません。「乾燥化」の意味するものの実体をまずきちんと把握する必要があるような気がします。

A 乾燥化の事実

  まず、乾燥化についてどのような事実があるかですが、私の知る範囲では次のようなことです。

乾燥化の事実−1池沼が消滅した
原因1 渡良瀬川の付け替え
  明治時代から現在までの地形図を調べると、池や沼の面積が明らかに減少しています。事実、かつてこの地方のシンボルであった赤麻沼という大きな沼が、今は影も形もありません。原因は何か。これは渡良瀬川を付け替えたためです。詳しくは遊水地の歴史を参照いただきたいと思いますが、渡良瀬川が付け替えられた大正7年以来、特に洪水のときに渡良瀬川の土砂がここに大量に堆積してきました。遊水地の土壌断面を調べると、その堆積土が場所によって数mに及んでいることが想像できます。
  その意味では遊水地は大正7年を境に乾燥化したと言えると思います。ただ、現在の遊水地は囲繞堤という堤防で渡良瀬川から隔てられているため、よほどの増水のときしか堤内に水が入りません。したがって土砂の堆積は現在はほとんど無視できるほどだと考えられます。

原因2 土木工事
  第1調節池の旧谷中村遺跡周辺の遊歩道作成工事に際して近辺の水位が低下した。その結果このあたりの水場が乾燥してしまった。
  これはよく調べていませんが、土木工事に当たっては一般に排水作業が伴うのでそのせいかと思います。遊水地では土を掘ると水がしみ出してきて池ができてしまいます。そのままでは工事ができないので、特別に水路を掘って排水したり、排水ポンプを常時動かしながら工事を行うわけです。そのため近辺の表層地下水位が下がってしまうと思われます。
  工事の際できた排水路なのか、遊水地には小さな水路がところどころで見られます。現実にそこを水が流れているので、それによる乾燥化があると思います。

原因3 植物群落の遷移
  遊水地に昔から入っている人が、前はもっと池があったはずだがと言ったり、航空写真を見ると以前に比べて開放水面が減っていたりする原因の一つに、植物群落の遷移があるかもしれません。
 どういうことかというと、浅い池には年とともにスゲやヨシが入ってきて、そのうちに背の高いヨシがびっしり覆ってしまうので池には見えなくなってしまうのです。かつてはスゲ笠作りのため、カサスゲをわざわざ栽培して時期が来ると刈り取っていました。その場所をスゲ田と呼んでいました。そのころは人手によってヨシの侵入を阻んでいたと考えられますが、近年はスゲ笠作りもすたれ、あちこちのスゲ田がヨシで覆われてしまいました。
  この場合は乾燥化とは言えないと思います。

乾燥化の事実−2スゲやヨシの群落面積が減り、オギの面積が増えた
原因 土木工事による乾燥化
  第1調節池の谷中村遺跡周辺で、スゲやヨシの群落面積が減り、オギ群落の面積が増えたという調査結果があります。オギは水が長く滞留するような場所には生育しません。したがってスゲやヨシに比べてオギはやや乾燥した所に生えるわけです。
  この場所の場合は、先ほどのとおり土木工事の排水による乾燥化が原因だと思われます。

  これ以外の場所について同じようなことが起こっているかどうかMOはデータを持っておりません。同じことが起こっているとしたらそこも乾燥化の傾向があると言えます。


B 乾燥化が疑われる事実

 
 次に乾燥化が疑われる事実も述べたいと思います。

疑われる事実−1表層地下水位が十分高い
  国土交通省の観測結果ですが、第2調節池のいくつかの観測地点では1999年4月に表層地下水位が地表のすぐ下にあったそうで、そこでは土を掘れば即、池ができるわけです。実際に第2調節池内の掘削跡地はいつも地表近くまで水をたたえた池になっています。
  この地方一帯には水の組み上げによる地盤沈下があります。深層地下水位が下がっていると聞きますが、生育する植物にとっては表層地下水位の方が重要です。
 表層地下水位は降雨量と密接な関係があり、建設省のその後の観測結果でもそれが表れています。
 遊水地では降った雨がなかなか排水されずしばらく滞留するという点は、現在でもあまり変わっていないのではないかと思えます。

疑われる事実−2湿生植物は非常に豊か
  渡良瀬遊水地は低地の湿地にしか生えない植物たちの最後の楽園かもしれません。乾燥化のためにそのような植物の生育面積が減少しているかというと、答えはノーだと思います。さきほどスゲやヨシが減ってオギが増えたという調査結果が一部の場所で出ていることを述べました。しかし、オギもまた湿生植物です。遊水地の外の乾燥した場所にはよく似たススキが生えオギは生えませんが、逆に遊水地の中では堤防以外でススキをほとんど見たことなく、堤内はすべて湿地に生えるオギです。

  乾燥地に生える植物がなぜ入って来られないか。MOは次のように考えています。最も重要なのは、ここでは長期の降雨期や台風のときなどに水没する期間があることです。植物にとっては一定期間の水没に耐えられることが、ここで生育できるための共通の条件と考えられます。普段は水が退いてじめじめした環境となっていることも大切で、それが多種多様な植物の生活の場をつくりだしているのです。
                水没に弱い植物の例 

  池や沼といった開放水面が減って(ただし谷中湖という巨大な開放水面ができたが)、昭和の初め頃栃木県の県南地方(渡良瀬遊水地だけではない)にあったと記録されているさまざまな水草の多くが今は見られません。しかし、この問題は開放水面の面積が減ったためというよりは、水質の悪化という要因の方が間違いなく大きいです。


  以上、乾燥化とそれが疑われる事実の両方をあげてみました。それぞれは遊水地全域について言えるかどうか、慎重に考慮される必要があります。

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Q9.ヨシ原に人工的に水を流すことは植物にとって良いことですか。 

 非常に良くないです。

 ヨシ原が比較的長期にわたって水が浸るようになった場合、多くの小型の植物にとっては恐るべき環境となります。
 
  国土交通省のヨシ原浄化実験池でMOが観察したところでは、ヨシがよく茂っていましたが(ただしすべて細い)、それ以外の植物はきわめて少なく、ほとんどヨシだけの群落といった感じでした。

 この環境は、一般の植物にとってトリプルパンチ的なあまりに厳しいものなのです。

 トリプルパンチの第1は、水です。水場に生える植物は、水中に生える(沈水植物)、水上に浮かぶ(浮葉植物)、水辺に根ざして立ち上がる(挺水植物)、に限られ、総じて水草と呼ばれます。水草にとってはそこが絶好の生活の場ですが、陸上植物は耐えることができません。

 そもそも、渡良瀬遊水地の絶滅危惧種の多くは、湿った場所に生えているけれども陸上植物であって水草ではありません。一般に、それらは冠水期間が長いヨシ原より、短いオギ原に多いのです。オギ原は乾燥化を象徴するもののごとく言われることがありますが、絶滅危惧種の宝庫という事実も知ってほしいと思います。 

 トリプルパンチの第2は、暗さです。ヨシがびっしり生えていると、その群落の中はとても暗いのです。植物は光合成をして生きているわけですから、暗いことは、動物でたとえると、ご飯が少ないようなことです。

 トリプルパンチの第3は、水質です。渡良瀬遊水地に流入する河川などの水質は良いとはいえず、透明度が低いことと栄養塩類が多すぎることが水草の生育を阻害します。

 この3つのきびしい条件をすべてクリアできる種はほとんどなく、結果としてヨシ以外に何も生えない環境になってしまうのです。

  ヨシが生えれば良い、という考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、数ある湿生植物の中でもヨシこそがもっとも強く、水場にはどこにでもあるものです。弱いもの、少数派、アウトサイダーを仲間と感じているMOは、ヨシにはあまり関心が向きません。

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Q10渡良瀬貯水池(谷中湖)には貴重な水草がありますか。

 残念ながら、まったくありません。

  渡良瀬遊水地の南部に、地図を見れば一目でわかるハート型の谷中湖があります。これは平地をわざわざ掘って作った人造湖で、水底は平坦です。水深は季節によって変動します。渡良瀬遊水地は、洪水時に渡良瀬川の水を一時的に貯留して、本川の利根川の水量を緩和することが最大の目的で造られています。そのために、渡良瀬川の水量が増える時期には谷中湖の貯水量を下げておき、水を取り入れるゆとりを持たせておくわけです。また渇水期の前には貯水量を多くしておき渇水期に放流していきます。そのように谷中湖の水深は計画的に変動しますが、水深は3〜7mといったところです。

  ここには水草が生えていそうなのですが、まったく見あたりません。岸辺に打ち上げられるものがあっても良さそうなのにそれがありません。

  その理由として考えられるのが、水質の悪さです。観測された水質のデータを見ると、「過栄養」の段階が当てはまりそうです。「過栄養」では水草の生育が困難になるとされています。

  リンなどの栄養塩類濃度が高すぎることが大きなマイナス要因となっていると考えられます。
  また透明度が低いので、水底に生える水草は光が届かないため光合成ができないと思われます。

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Q11.絶滅危惧植物をどこかに移して育てれば良いのではないですか。

  それは場合によって必要です。 しかしそれで済む問題でもありません。

  渡良瀬遊水地の絶滅危惧植物の中には、特定の狭い場所でしか見つかっていないものや、生育個体数が少ないものがあります。遊水地においても、人為的な環境破壊、採取、自然現象である遷移によって、これらは常に消滅の危険にさらされています。したがってその種(たね)を採取したり株を他の場所に移して殖やしたりすることは必要なことだと考えられます。また、一般の人たちの目に触れる場所で育て、これらの植物に関心を持ってもらうことも必要だと思います。

  たとえばフジバカマですが、遊水地には数株程度の群落が1カ所あっただけでした。藤岡町在住の篤志家の方が、その種子から育てた苗をあちこちに移植して、現在は群落を増やすことができました。

  ところで、種(しゅ)は、遺伝子のプールだと考えられています。
  人間で考えてみましょう。一人一人のヒトはそれぞれ異なる遺伝子を持っています。どのような遺伝子の組み合わせを持っているかが、その人の個性の源の一つとなっています。そして次の世代にはまたさまざまに異なる遺伝子の組み合わせが生じる。ヒトという種のプールの中で、遺伝子が時間の流れとともに撹拌されているようなものです。

 そこで、たとえばヒトが絶滅しそうになってきたので(そんなことがあるか?)、殖やさなければならないとします。おそらくクローン技術はヒトにも応用が可能でしょうから、殖やすのは簡単かもしれません。ある特定の人(Aさん)が選ばれてその細胞が無数の人間になり、めでたく人口が増えたとします。それでよいでしょうか?
 増えたのはAさんを構成していた遺伝子です。それはヒトの遺伝子全体の何%でしょう。おそらく一部と言ってよいでしょう。種としての活力を維持するためには多様な遺伝子がプールされねばならないとされています。

 本題に戻りますが、絶滅危惧植物の群落も小さな固有の遺伝子集団と考えられます。望ましいのはそこにあるすべての遺伝子を保存することで、決して1個体からとった遺伝子だけを殖やして満足できることではありません。

 ということは、どこかに移す場合、理想的に保護するためには、群落中の数多くの個体からとった種(たね)や株を育てる必要があるということです。これは広い面積を必要とします。

  また、ある場所に群落が残っていたということは、その場所に残った理由があるはずで、それが何かを考える必要もあります。重要な要素は種(しゅ)を取り巻く環境ですが、光、水、土、養分などの無機的環境に加えて他の植物や動物といった有機的環境が複雑に影響を及ぼしており、単純ではありません。

  自然保護の基本的な考え方として、個別の種の保存だけを考えるのでなく、環境全体を保全しようとすることにはそのような意味もあるわけです。

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Q12.きれいな花をたくさん見たいのですが。

 残念ながら、高山のお花畑を連想して来られると、少しがっかりするかもしれませんね。花の咲かない植物はほとんどないといっていいですが、咲いていても小さかったり地味だったりが多いです(でも拡大して見てみてください!!)。

  高山では雪解けから降雪までの短い夏に一斉に開花しますが、低地では早春から晩秋まで時期をずらして少しずつ花が咲いていきます。したがって一時期に花が集中するわけでもありません。

  しかしあえていうと、花を見るのにもっとも良い時季は5月初旬だと思います。渡良瀬遊水地は3月下旬にヨシ焼きが行われて広大な焼け野原になり、その後ヨシの新芽が伸びます。5月初旬はヨシがまだ伸びきらず、見通しがとてもよいのです。また、ノウルシチョウジソウなど地味ながらも多彩に花が咲く時季だからです。5月下旬以降はヨシが背丈よりも高くなるので花も探しにくくなるでしょう。

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Q13.渡良瀬遊水池? 渡良瀬遊水地?

  MOは門外漢ですが、調べたことを書きます。間違っていたら教えてください。

  明治時代に土地が強制収容され、ここが遊水地になったわけですが、その当時、現在の渡良瀬遊水地をさす固有名詞は選定されなかったと思われます。

  なぜかというと、大正14年内務省東京土木出張所発行の『渡良瀬川改修工事概要』には、ここは単に「遊水地」とだけ表現されています(写真に「赤麻沼遊水地」となっているところもある)。

  また、昭和10年内務省東京土木出張所発行の『内務省東京土木出張所管内工事概要』では、「遊水地」となっていますが、文中の表や地図に「遊水池」、写真に「渡良瀬川遊水池」という言葉が使用されています。 また昭和7年発行の地形図では単に「遊水池」となっています。

  おそらく昭和30年頃、建設省によって利根川改修工事計画が策定される中で、「渡良瀬遊水池」という名称が定着したと想像されますが、地形図上では昭和59年発行のものでも単に「遊水池」となっていました。

  しかし、昭和53年頃、建設省が建設中の貯水池(渡良瀬貯水池)と区別するために「池」「地」に変えて「渡良瀬遊水地」としました。昭和62年発行の地形図でもそのように変わって現在に至っています。

  MOも「地」の方が適切だと思っています。なぜならここは普段は池ではなく、ほとんどがじめじめした地だからです。

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