夏休み企画「コージー君とカーマイン君」です。「徹底比較」なんて書いて↑画像作っちゃいましたけど、今考えると全然比較じゃないですね。キャリアを通じて何かと縁のあったコージー・パウエル、カーマイン・アピスというロック界の2大ドラマーにまつわる興味深い事柄について、あーだこーだ言いたかっただけなんですけどね。まあ、「あーだこーだ」っつうほどネタないんですけど...。「夏休みの宿題の自由研究のテーマが見つからない!」などとお子さんが言い出したら、「これなんかどう?」なんつって薦めてみてはどうでしょうか。私ならそうします。そんで担任の先生が30代後半のコージーストライク世代だったりなんかすると、内申書(懐かしい単語!)アップ間違いなしです。
ジェフベック「迷信」疑惑
 ジェフベックグループに関しては加入の経緯からして因縁めいてますからね。一応おさらいしておくと、

 1969年、ヴァニラファッジのライブを観たジェフは、ドラマーのカーマインアピスとベーシストのティムボガードをいたく気に入り彼らとのバンド結成を考える。同年、第1期ジェフベックグループ(以下JBG)が(意図的に?)解散すると、さっそくニューバンド結成のため彼らの住むニューヨークへ出発....するはずが、出発前日にジェフが交通事故を起こし全治3ヶ月の重傷を負ってしまう。結局このニューバンドの構想は崩れ去り、カーマイン&ティムはカクタスを結成してしまった。復帰後、ジェフは第2期ジェフベックグループ結成のためメンバーのオーディションを始める。そんな中、最初に合格したメンバーがコージーだった。

 っとまあ、だいたいこんな感じだったと思います。 もしジェフが事故を起こしていなかったら、もしカーマインがジェフの復帰を待っていたら、コージーはこの時点でのメジャーデビューは果たしていなかったわけで、その後のキャリア(レインボー加入等)もなかったかもしれないわけです。まさにターニングポイント。因縁めいてますね〜。 

  で、その後コージーの在籍する第2期JBGが空中分解すると、ジェフはカーマイン&ティムと念願のスーパートリオ「ベック・ボガード&アピス(BBA)」を結成します。「迷信」疑惑とは、このBBAの1stアルバムに収録されたスティーヴィーワンダーの「迷信」についてのコージーの発言に端を発します。コージー曰く「(BBAのアルバムを聴いた際)その時オヤッと思ったのは、スティーヴィー・ワンダーの迷信を聴いて、どうもそのドラムスが僕の音に似ているんだ。よく考えてみたら、僕とジェフがデトロイトでモータウンの連中とレコーディングした時に、やはりあの曲を吹き込んでいる。このトラックは、あの時レコーディングしたテープを使ったんじゃないかと疑ったよ。僕は今でもそう信じてる。」 ということです。確かに、コージーとジェフは第2期JBG始動時(メンバーはジェフとコージーのみ)、デトロイトでモータウンのベーシストらと共にテンプテーションズなどのヒット曲をレコーディングしており、その際に件の「迷信」をレコーディングしているのも事実のようです。しかし、ジェフベックが夢にまで見たニューバンドの、それも記念すべき1stアルバムに前任ドラマーとレコーディングした昔のテイクを収録するものでしょうか。とてもそんな風には考えられませんが、ジェフベックだし(?)...。でも、いろんなジェフベック関連の記事読んだけど、どこもそんなことに触れてないし...。でも、コージーがあそこまで自信持って言ってるし...。

このロック史上最大の疑惑の真相は果たして...!?

レインボー加入問題
 別に問題視するほどのことじゃない事くらい分かってますっ!っていきなり言い訳から始めるのもどうかと思いますが、とにかく些細な"因縁"です。カーマイン曰く 「'75年にリッチーブラックモアにレインボーに参加してくれと依頼されたけど、当時僕は他のレコード契約があって参加できず、結局コージーがレインボーに加入することになった。」 ということですが、これどうなんでしょうか?こんな話、他で聴いた事ないんだけど。マジ?。レインボーについては「コージーが13番目にオーディションを受けて、1発ドカーンと決めてから見事なセッションをこなし加入を決めた」というカッコイイ(?)エピソードしか知らないんで何とも言えないんですけど。まあ、もし本当だとして、カーマインがレインボーにはいってたら歴史が変わってたでしょうね、かなり。特に日本では、ドラマー人口に影響を及ぼしたんじゃないでしょうか。ドラマー不足。あと今頃ヤマハはドラム事業から撤退してたでしょうね、多分。
ブルーマーダー「コピー」疑惑
  コージーはELP脱退後、ホワイトスネイク時代に意気投合したジョンサイクスとブルーマーダーを始めますが、シンガー選びの難航や遅々として進まないバンドの状況に嫌気が差し1stアルバムレコーディング前に脱退してしまいます(実は金銭問題だったりするかも)。そして後任として加入したのがカーマインアピスでした。カーマインによると、ブルーマーダー加入後半年間もコージーの残していったセットを叩いていたそうです。そんなことも影響したのか、コージーが曲作りに深く関与していると思われるブルーマーダーの1stアルバムでのカーマインのプレイは、コージーの叩いていたフレーズによく似ていると言われていました。というか、当時('89年頃)コージー自身が、「あれは俺のコピーだ」みたいなことを言っていました(発言参照)。

 当時私はブルーマーダーも相当好きだったのでこのコージーの発言についても、「皮肉を込めて大袈裟に言ってんだろう」くらいにしか思ってませんでした。が、時は流れてコージー没後のドラムマガジンの追悼特集でカーマインが気になる事を言っていました。 曰く 「ブルーマーダー(1stのタイトル曲)のハイハットのトリプレットの背景にはコージーのプレイがあった。ジョン・サイクスがコージーのデモを聴かせてくれたんだけど、そこでコージーはレギュラービートの上にハイハットをオーバーダブしていて、僕はそれを聴いてかっこいいと思い、さらに自分らしくそれをオーバーダブせずに一度に叩くことにしたんだ。」 これを読んで「なるほど」と思いました。コージーはこのことを言っていたんだなと。あの印象的なドラムのイントロはコージーが考えたフレーズなんだなと。でもコージーのアイディアを利用したのはこの曲だけなんだろうな、とも思いました。

 しかし、その後コージーが叩いていると思われるブルーマーダーのデモを入手したのですが、それを聴いてまた考えが変わりました。そのデモには1stアルバム収録曲が3曲収められており、非常に興味深いものでした。

RIOT  カーマインのコピー度     ★★★☆☆☆☆☆☆☆
 アルバムのオープニングを飾るナンバー。オフィシャル(発売されたバージョン)と比べてかなりテンポが遅いうえに完全な8ビートのように感じる(オフィシャルは16ノリ)。諸々のフィルイン、ハットのオープン・クローズ、シンバルの使い方などからこのテイクは間違いなくコージーが叩いていると思われる。リズムイン及びサビ前の16分音符+32分音符のフィルをコージーは得意のダカドコで決めているが、カーマインのフィルもコージーのを元にしているように感じる。完成前のデモだけにアレンジ・構成ともにオフィシャルと異なるが、途中でブレイクが入るところやそのブレイクで得意のフィルを決めるところはいかにもコージー好み。多分コージーのアイディアだろう。
OUT OF LOVE  カーマインのコピー度     ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
 名曲。名バラード。いきなり「ドドン!」とリヴァーブの効いたバスドラが強調されていて驚く。デモということもあるのか、オフィシャルに比べてドラムアレンジに工夫がなく、曲全体がメリハリのない間の抜けた印象を受ける。このテイクなら、カーマインの方が良いと思う。でもデモだから...(あくまで擁護)。エンディング部分のドラムはちょっと「RAINBOW ON STAGE」の"Mistreated"を思わせる。あくまで"ちょっと"だが。
PTOLEMY  カーマインのコピー度     ★★★★★★★☆☆☆
 タイトル通りエジプトをテーマにしたヘヴィなナンバー。イントロのドラムフィルはまんまコージー。聴いた印象もそうだが、実際の符割もほとんど同じ。「カーマイン、こりゃ完コピだよ」と言いたくなる。ただ、この部分のドラムは楽曲のイメージを決定付ける重要な役割を果たしていて、コージーのバージョンから変えようがなかったというのが現実だろう。ジョン・サイクスから「こう演ってくれ」と頼まれたのかもしれない。コージーはやっぱり凄い。 リズムイン後も一貫してヘヴィなノリに終始しており、時折顔を覗かせるハットのオープン・クローズもたまらない。ハッキリ言ってこの曲に関しては断然コージーの方が合っている。
と、3曲で比較してみたんですがどうでしょうか。多分コージーは"Blue Murder"と"Ptolemy"を聴いて、「俺のコピーだ」と言ったんだと思います。全部聴いて比較しないと分かりませんが。こうなってくるとどうしても"Blue Murder"のコージー版デモを聴いてみたくなります。どなたかお持ちの方は是非ご連絡ください。
結論
 2人が、これだけ同じミュージシャン絡みで関わりがあるという事は、それだけ求められる資質が似ているという事になるのでしょうか。確かに2人ともヘヴィでハードヒッターであるという共通点はあります。が、2人は全く異なる資質の持ち主であると私は思います。カーマインは最高のドラマーです。私はカーマインもかなり好きです。センス・柔軟さ・経験・楽曲に対する理解等どれをとっても文句のつけようがありません。が、タイプ的にはあくまで一般的なロックドラマーであり、そのカテゴリの中で最高峰に位置するドラマーなのであります。それに対しコージーは、他に類を見ない唯一無比な「コージーパウエル」というジャンルにいる絶対神的な存在なのではないでしょうか。(両者とプレイしたベースのトニーフランクリンも似たようなニュアンスのことを言っていました。) なので、2人を比較するということ自体ナンセンスだったのかもしれません。      ......何だそれ。

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