ゴールデンウィーク前夜

〜〜 ある日の荻・・・ 〜〜

00/05/02夜

電話のベルが鳴る。管理元の上位組織よりの応援依頼・・・。
相方に出動して貰い、待機を引き受ける事にする。
これで、1時間の延長戦が確定。
それでも、このまま何事もなく帰る事ができれば、明日の分の毛鉤巻きをするくらいの時間はあるだろう・・・。


延長戦開始直後、またも電話が鳴る。今度はユーザーからだ。
トラブルの内容を確認する。どうやらメカの一部が引っ掛かっているらしい。
日頃から協力してくれるユーザーだ。
電話の向こうからも復旧にかける意気込みが伝わってくる。
しばらくは、そのまま電話でエラー解除を試みてみる。

一通り試した後・・・、
「どうやら、お邪魔した方が良いようです。」
残念ながらそう答えて受話器を置く。
GW前夜、それもこの時間帯で、正規の部品がまともに手に入るとは思えない。
残り時間を計算して、少し燃えてくる。敢えて自分の愛車で出動・・・。


バラバラにした装置の、問題になっているその部分を睨んで途方にくれる・・・。
「曲がった媒体を入れたらしいんです・・・。」担当の方が困った顔でそう告げてくる。
なるほど、それで部品が割れて、こんな所が引っ掛かってるって事か、壊れた原因は分かった。
後はどうやって・・・。
延長戦1ラウンド終了まで、後、20分・・・。新人だった頃からの、なじみ深い装置・・・。
「やるか!!」
頭の中で、何かのスイッチが入った。
最初の目標、今日中にGW用の毛鉤を巻く事・・・。
工具鞄のスミにある、普段はあまり使わない工具達が急に活気づく・・・。


散らばった工具の真ん中で、装置が元の形に戻る。
テストプログラムを起動・・・。エラーの解除に・・・成功。
業務終了のオートアナウンスが流れる中、本番動作の確認を依頼する・・・、結果はNG。
無念の2ラウンド目に突入が確定・・・。


もう一度バラして見る。問題の部品を眺め、再び考え込む。
「今日は終わりなんですが、明日は動くんですよ・・・。」
担当者の方も、半ば明日の休日出勤の覚悟を決めている。
明日、直す・・・か?
「なにか、いい手がないか調べてみます。」そう話して、電話を借りる。
生き返らせたい!、自分とユーザーのGWの為に・・・。
付近の拠点へ、Helpメッセージを投げる。
既に、交換済の故障品になっている部品が見つかった。
電話でその部品の状態を確認しながら、頭の中で、二つの故障品をバラして組み直す。
「いけそうですね・・・、取りに行きます!!」
目標がハッキリしていて、条件だけが限定している。明日からは、ベストな状態で遊びたい・・・。
「この世代の装置なら・・・、技で直せる。」
自分にそう言い聞かせる。自分の中で完全に火がついたのが分かる。


愛車に飛び乗る。
「毛鉤は無理・・・か。」ちらっと左腕を見て、そんな事を考えながら拠点を目指す。
2ラウンド開始から、15分。目標を変更。連休確保・・・・。


拠点で部品と対面する。当然、状態は良くない。
荷室に積み込み、走り始める。
GW前の道路は、浮足だっていてあまり良い状態とは言えない。
「早くアッチに混ざりたいもんだな・・・。」と考えて、苦笑・・・。

再度、ユーザーに飛び込む。
少しの間、問題の部分の構造を見つめ、頭の中で手順を組み立てる。
手順を追いながら、いつもの倍のペースで手を動かし始める。
最新型を同じペースで組むのは・・・、たぶん無理だ。


2ラウンド開始から、1時間。遂に装置が息を吹き返す。
いくつかの動作確認を、頼もしくクリアして行く。
管理元に復旧の報告を入れる・・・。


こうして、あたふたと私のGWが始まった。
ちょっとした達成感、ユーザーの笑顔と「ご苦労さま!!」の言葉を手に入れて・・・。



いえね、大した事はしてません。同業の方に話せば技術的には、どうって事ない話です。
重要なのは、燃えてはいたけど、イヤでは無かった事。プロなんだから当然なんですが・・・。
そうですね・・・、修理屋さんは基本的に自力で機械を「生き返らせる」事が好きです。
もし、今回の様にお客様のGWをも確保出来たりしたら、修理屋冥利に尽きるってヤツです♪

最近、何処へ行っても仕事が忙しい様です。人間ですから、イヤな時はもちろん有ります。
精神論だけではカバー出来ませんが・・・。出来るだけ、こういう気持ちで仕事したいと思っています。
自分自身の為に・・・。

ちなみに、背景画像の時計は当日の物ですが・・・、実は大した時間は指していませんです、ハイ・・・。(笑)


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